【完】一生分の好きを、君に捧ぐ。
片道二時間かかる通学路。
わざわざここまで来なくても、近隣でいくらでも高校なんてある。

だから、同じ中学出身の人なんていない。



……だれも私の過去を知る人がいない。


すべての鎧を一気に脱ぎ取った生身の体というのは、思いのほか軽かった。




茶色いブレザーに身を包み、見上げた校舎。


……世界が、あかるかった。



駆け抜ける風、桜吹雪。


吸った空気が、体をめぐっていく心地よさ。

空が途方もなく広くて、青くて。


泣きたくなるほど清々しい思いが溢れ続ける。



……一歩踏み出してしまった、って、そう思った。



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