LONELY MOON ―ロンリームーン―
 


「…こほっ、先生…こんにちは」

「あら、噂をすれば陽那ちゃん!」

「はい?」



その声に俺の瞼は一気にかっ開いた。

本当に、噂をすればなんとやらだ。

すぐにも起き上がりたい気持ちだったが、ここは悟られないように寝ながら少し瞼を上げて、ちらりと視線を送る。

…やっぱりだ。

やっぱり、良い女だ。

もしかすると、今まで俺が見てきた女で、1番。



俺はまた気づかずうちに、たくさんの視線を送っちまってたらしい。

あっちの視線も、俺の方へと向き、結果的に目が合った。



「…あ、昨日は、どうも」

「………」



どくん。また心臓が跳ねた。

何だ、俺に話しかけるのが恐くねぇのか?

…ああそうか、こいつは転校生で、俺のことはよく知らねェのか。



俺はその言葉を無視して、また瞼を閉じた。



「あ、陽那ちゃん。今日はベッド存分に使っちゃっていいからね」



美佐子のそれは明らかに俺へのあて付けの言葉だ。

それも無視して、目を閉じ狸寝入りをしていると、近くに気配を感じた。

うっすら瞼を開けてみると、



「…あの」


「!?」



俺を覗き込む、女だった。
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