ことほぎのきみへ
少し長めの癖毛も
表情の読めないその顔も


左耳のあのピアスも

あの頃のまま



「…」

「…大丈夫、じゃないね
あんな目に遭えば当然か」


私が声も返せず、黙りこんでしまった原因を
勘違いした様子の彼がぽそりと呟く


「連れの人はいる?」

「…」

小さく頷く


「…向こうに…」

「そう。送ってくから行こう
歩ける?」


また頷く







ふらふらとおぼつかない足取りで
彼の後に続く


そんな私を振り返り、彼が手が差し出した


「…?」

「今にも倒れそうだから
嫌だったら俺の服の裾でも適当に握ってて」


どうやら引っ張ってくれようとしたみたい


さっきの事があったからか
私が嫌かどうかもちゃんと気にしてくれて

そんな風に言ってくれた



「…」


そっと差し出された手をとる

やんわりと握り返し、歩き出す彼
彼に手を引かれながら私も歩く
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