溺愛依存~極上御曹司は住み込み秘書を所望する~
名残惜しく経理部をあとにすると、エレベーターで秘書室がある十階に向かう。フジオカ商事に入社してから本社ビルに毎日のように通っていたにもかかわらず、今まで一度も秘書室があるフロアに足を踏み入れたことはない。
心臓がドキドキと高ぶるなか、エレベーターがポンと音を立てて止まった。開いたドアから降りた先に見える秘書室に向かって足を進め、入り口の脇にあるインターホンを鳴らした。
「はい。秘書室受付でございます」
透き通った綺麗な声がインターホン越しから聞こえてくる。
「本日づけで秘書室に異動になりました雨宮菜々子です」
「お待ちください」
「はい」
要件を伝えるとすぐに、秘書室のドアがガチャリと開いた。
「どうぞ。お入りください」
「失礼します」
対応に出てくれた女性に誘導されて秘書室に入る。
南向きの窓にかけられたブラインドの隙間から太陽の光が柔らかく差し込んでおり、デスクの上も後方に設けられた収納キャビネットの中も整理整頓が行き届いている。
ファイルや資料が多く、収納キャビネットで四方を囲まれていた圧迫感のある経理部とは違う綺麗なオフィスに感動していると、ひとりの男性がこちらに歩いてくるのが見えた。