卒業写真    ~思い出の一枚~
「今日は少し遅くなると伝えてあるから
のんびり過ごせるな。」

「うん!」

最近、少しだけ敬語もとれて

彼女なんだなぁって思えるようになってきたの。

「今日は何を食べたい?」

独身が長い先生は、料理も上手で

オムライスにカレー、パスタと色々作ってくれるの。

私達も学校の調理実習で、作り方は習ったものの

元々お嬢様だから

ご飯を作らないといけない家庭に、お嫁に行く設定で

授業をしてないの。

だから、テーブルマナーやちょっとしたお菓子作りのみ。

私も、まさか先生とおつきあい出来るなんて

思いもしなかったから

お料理教室だって、習ってこなかったの…………。

「先生、ごめんね。
この間からお料理教室に通い始めたんだけど………
包丁すら持ってこなかったから…………
キュウリのスライスすら…………合格にならないの。」

そう伝えると

私の絆創膏ばかりの指先を見て

ポンポンと頭を撫でて

「桜、ありがとう。
でも、無理はするなよ。
ゆっくりで良いんだから。」と言って微笑む。

「だったら、今日のご飯…………。
私にも、一緒に作らせて。
お手伝いにはならないだろうけど………
先生とだったら、頑張れそうだから。」
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