キリンくんはヒーローじゃない
ガラスの靴は、きっとわたしが落とした


「雨、ひどくなってきちゃったね」


勢いよく降りしきる雨粒が、地面に跳ね返り、辺りを汚す。本降りになる前に、動物の力で作られた住処のような、人間がこっそり作った秘密基地のような、そんな洞窟を見つけられたのは幸運だった。

二人して膝を抱えて丸まりながら、雨が止むのをしばらく待つ。


「今頃、宿でレクリエーションでもしてんのかなあ。雨だから、飯盒炊爨は中止だろうな」


雨音に紛れて、先輩の独り言が聴こえる。本来なら、先輩はここにいるべきひとではなかったはずだ。隣で喋っていたわたしが突然崖下に落ちて、心配だったから助けにきてくれたって、どう考えてみても足を踏み外したわたしのせいだ。イベントごとに参加できなかった先輩の気持ちを思うと、胸が堪らなく締めつけられる。


「宿のご飯、美味しいといいなあ。俺は断然肉派で、魚は好きじゃないんだけど、小梅ちゃんはどう?」


こんな究極な状況でも、ツキ先輩は明るく振る舞ってくれる。自分がどれだけ情けなくて、他人に迷惑をかけてるかってことを強く自覚して、思わず泣きそうになる。


「小梅ちゃん、…大丈夫?」


一度も返事をしないわたしの様子が気になってか、静かに距離を詰めてくると、上目遣いでわたしの表情を仰ぎ見てきた。

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