この空の下
いくら温厚な部長でも、新米医師の私がたてつけば10倍返しが来る。

分かっていたことなのに、

私は謝ることができなかった。



無言で検査着に袖を通し、検査に入ろうとした私。


パンッ。

優子先輩に頭を叩かれた。


それでも、私は止らなかった。

部長の態度に垣間見える医師としてのおごりのようなものが、空の言動と重なって我慢できなかった。


「患者が苦しんでいるのが分からないんですか!」

叫んでしまった。


本当に・・・私はバカだ。



優子先輩に引っ張り出され、


「しっかりしなさい」

と叱られたけれど、もう気持ちは固まっていた。


もう辞める。辞めてやる。


仕事も空も人生もすべてリセットしてやる。



と言うわけで、本当に辞表を出してしまった。
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