この空の下
「このままではダメなのよ。芝居をうってもらった私が言える立場ではないけれど、彩葉さんが現れた以上整理しなくちゃ」

このままでは嘘に嘘を重ねることになる。

きっと歪みも出てくるだろうし、彩葉さんを傷つけることになりかねない。


「彩葉のことは気にしなくていいと言ったはずだが?」

「そうはいかないでしょう。元々、空を諦めさせるために私達が付き合っているって嘘をついたのは、あなたに彼女がいなかったから。その方が理事長の手前都合も良かったし。でも、状況が変わったじゃない。彩葉さんが帰ってきたからには、1度リセットする必要があるのよ」


「でも、君がここを辞める理由にはならないだろう?」

まあね。

何もなかったように働くって選択もなくはない。

でも、

「私がイヤなのよ」


「イヤって・・・」

困った顔になった隆哉さん。


「お願い。何も言わずに辞めさてちょうだい。もちろん予約の患者さんについては責任もつから。もし後任が決まらなければ医学部時代の後輩に週に何度か半日づつでもバイトを頼めると思うし。それでも無理なら、私も応援ではいるから。申し訳ないけれど、後任を探してください」

私はテーブルに手をついて頭を下げた。
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