この空の下
「俺のけじめでもあるんだ」

「けじめ?」

「ああ。3年前、俺には未練があったのに彩葉を引き留めることができなった。小さなプライドが邪魔をしてね。そして、その思いをずっと引きずっていたから、今回現れた時もハッキリと突っぱねることができなかった」

とっても辛そうに、一言一言を口にする隆哉。


「どっちにしても俺の罪だ」

「隆哉」

「退院してこのまま日本にいても彩葉は良くならないと思う。彼女自身もフランス行きを望んでいるし。そして、彩葉との関係にけじめをつけるためにも、フランスまで連れて行ってやりたい。ちょうどヨーロッパの福祉制度について視察に行きたいと思っていたところだったから、それも兼ねて1ヶ月。行かせてくれないだろうか?」


1ヶ月。



「本当に帰ってくるのね?」

「当たり前じゃないか」


一旦立ち上がった隆哉は、私のとなりに座り直した。

そっと肩を抱き、

「俺の帰るところはここしかない」

優しい優しい声。


仕方ない。待ってあげましょう。
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