この空の下
「分かりますか?」

「ええ」


凄いなあ。

なるべく分からないような服を着ているせいか、多恵さん以外に気づいた人はいなかったのに。


「隆哉は知ってるんですか?」

私は首を振った。


「ダメじゃないですか。黙っていていいことじゃありませんよ」

「ええ」


分かってはいるんだけどね。

伝えるタイミングを逃してしまった。



「いつ帰ってくるんですか?」

「・・・」

「連絡を取ってないんですか?」

「ええ」


「何をしてるんですか」と溜息をついた吉川さん。



ちょっと意地悪な顔をすると、

「隆哉に黙っていて欲しいですか?」


「はい」

もちろん。

そんなこと言われては困る。


「じゃあ、週末に付き合ってください」

「吉川さん?」

「お休みなのにどこにも連れて行ってくれないって、日向に怒られてるんです。付き合ってください」

「はあ、いいですけれど」

このおなかではどこにでもって訳にはいかないけれど、


「じゃあ日曜日に。また連絡をしますね」

吉川さんは一方的に言って帰っていった。
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