この空の下
でもね、親や親戚に縁の薄かった私としては嬉しい気持ちもある。

私のおなかにいる子供ではあるけれど、隆哉や理事長にこんなに大切にされていることがありがたい。


愛させて生まれてくることほど、幸せなことはないと知っているから。


「羽蘭、これ」

夕方の見舞いに来た隆哉が小さな手帳を差し出した。


「何?」


見ると、

母子手帳。


「まだもらってなかっただろう?」

「うん」


色んな意味で、決心がつかなかったから。


「ありがとう」


実は、私には母子手帳がない。

病気になった母が燃やしてしまったから。

そんなトラウマがあって、母子手帳をもらいに行けなかった。



こうして、たった1週間の入院期間も日々バタバタと過ぎていった。
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