この空の下
「麗子こちらは?」

花の生けられた花瓶を持って入ってきた美人さん。
どうやら麗子さんのお母さんだったみたい。

「ああ、こちら御崎診療所の羽蘭先生とご主人の隆哉さん。隆哉さんは御崎グループの理事で空の病院もお世話になっているの。それに、羽蘭先生は私が盲腸になったときに凄くお世話になったのよ」

「そうなの」
驚いたようにこちらを振り返り、

「桜井宝(たから)です。娘が大変お世話になりました」
丁寧に頭を下げる女性。

「恩田羽蘭です。こちらこそ麗子さんはお世話になっています」

とても麗子さんのお母さんには見えない。
どう見ても姉妹よね。


「かわいいですね」
不思議そうに赤ちゃんを見つめる隆哉。

「当然だよ。俺の子だよ」
空がまた言ってる。

「もうすぐ出てくるんだよな」
ポツリとつぶやかれた言葉。

私もお腹に手を当てた。

「随分大きいけれど、予定日はいつ?」
森先生の奥様がお腹をなでる。

「月末なんです」
「そお。楽しみね」
「はい・・・先生は消化器科のドクターですか?」
「えっ?」
驚いた顔。

あれ、いけなかった?
森先生が指導医だったって聞いたから、てっきり消化器科のドクターかと思ったのに。

「あなたは何科なの?」
逆に聞かれてしまった。

「消化器科医でしたけれど・・・」

今はとても消化器科医なんて名乗れない。
カメラだってたまにする程度だし、
画像診断だって、総合病院にお任せ状態だもの。

「桜子先生は小児科のドクターなのよ」
優子先輩が教えてくれた。

へー。
< 397 / 405 >

この作品をシェア

pagetop