この空の下

元カノ

「せい、羽蘭先生」

ボーッとしてしまった私に、多恵さんが声をかけていた。


「ああ、ごめんなさい」

ちょっと考え事をしてしまった。


「大丈夫ですか?」

心配そうに覗き込む多恵さん。


「大丈夫です。すみません」

どうしたんだろう私。


「ちゃんと仕事をしてくださいね。次も若い女性の新患さんですよ」


へえー、珍しい。

ここに来る患者のほとんどが常連の老人達なのに。


「呼んでください」



「森さーん。森彩葉(もりいろは)さーん」
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