海の底にある夢【完】
その後、順調に旅路は進み最初の目的地であるポルスに到着した。
先に荷物を届けるため本部に向かうと、ステンドグラスの到着を待っていたのか本部の建物内には大勢の人が待ち構えていた。
「運びまーす」
次々と手際よく運ばれていく大きな包みを二人で眺めていると、ふいに横から声をかけられた。
「初めまして殿下。お会いするのは初めてですが、文書の言葉ではお久しぶり、ということになりますかね」
「ああ、ではあなたがレイダス殿か」
「はい。お会いできて光栄です」
「こちらこそ。これからも世話になる」
と、親しげに握手をしだした二人。
レイダス、という人物はディレストの想像よりも若く、まだ三十代半ばに思えた。
彼は会長であり、海の神に集う会を立ち上げた張本人である。
長くぼさっとした茶髪の下で一重の黒目は眠そうに細められていた。
「それで、こちらが例のお嬢様ですね」
「ああ、そうだ。エア・スミスという。髪は染めているが本来は真っ白だ」
「初めまして、エアさん。私はレイダスと申します。この会を立ち上げた一人です。現在は会長をしており、海洋考古学者でもあります」
「は、初めまして…あの、海洋考古学者とはなんでしょうか」
「長い話になりますから、あちらの部屋へ行きましょう。お菓子でも食べながらご説明いたします」
と、レイダスに連れられて二人は会議室のような広い部屋に通された。
円形にテーブルが設置され、椅子が壁際に寄せてある。
その部屋に三人が入ると、男性が数人入ってきて椅子を用意し、後から来た女性はエアに微笑みかけるとお茶とお菓子を置いて去って行った。
そして一通りの準備が終わると、レイダスに座るように促され二人は椅子に腰を落ち着けた。
「長旅お疲れ様でした。こちらのお菓子は我が会の名物でして、魚介類の形をしたクッキーです。近所の子供たちには大人気なんですよ」
「いろいろな形がありますね」
エアはお皿の上に乗った茶色いクッキーを眺めた。
イカやタコ、小魚、貝などの形をしている。
「はい。お気に召しましたか?」
「はい、とても!」
「感性が子供だしな」
「そ、そんなことありません…」
「ふふ。とても仲がよろしいんですね」
「まあ、そうだな」
その手の話題の回避法をいまいち取得していないディレストが言葉を濁すと、さらにレイダスはクスクスと笑い、ゴホン、と咳払いをした。
「えー、では海洋考古学者とは何者なのか、ということですね」