対立相手が婚約者。それって何かの冗談ですか?
「綺麗ですね」

「恵巳さんには負けますが」

照れた恵巳は、拡樹の胸に顔をうずめる。

「顔隠さないでくださいよ」

ゆっくりと顔を上げると、光を含んだ拡樹の目に吸い込まれそうになる。そっと目を閉じた。

薬指の輝きと誓いの口付けを、植物園の花々たちが優しく見守る。夜風に揺れる花びらは、2人を祝福しているようだった。
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