対立相手が婚約者。それって何かの冗談ですか?
「あ、朝から、説教ですか…」

「説教ですよ!拡樹さんは、馬鹿なんですか?おかしいですよ!
なんで待っちゃうかな…」

今にも泣きそうな震える声。抱きしめたくなるのを堪えて、恵巳と目が合うのを待つ。

「待つのを止めたら、もう二度と恵巳さんに会えなくなるような気がして、帰ろうなんて思えなかったんです。

僕は、馬鹿なんです。ちゃんと言ってもらわないと何もわからないんです。だから、教えてほしいことがあります」

「…」

お互いに、覚悟を決めた顔をして向き合った。シンとした空気を、拡樹が切り裂いた。

「僕のこと、避けてますよね?」

いきなり核心を付いた質問に、恵巳はぎょっとして、感情が表情に出ている。

「どうして僕は避けられているんでしょうか。何か避けられるようなことをしてしまったのなら、誠心誠意謝ります。ですが、僕には心当たりがないのです」

心当たりがない、その言葉に恵巳の目の色が変わった。これは、確実に何かがあった。そう確信した拡樹は、話してくれるのをただ待った。
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