リンゴアメ.
「これにすれば」

「え、あ、うん…」

高野君がちょっと大きめのりんご飴を選んでくれた。形は少し歪だけど…。
お店の人に硬貨を渡して、ぺろりとりんごを舐めてみる。
甘くて甘くて、やっぱりいつものりんご飴。
おいしいのは最初、かわいいのは見た目、でも大好きなりんご飴。

高野君にはぐれないように、りんご飴を握りしめて、人ごみをかきわけて歩く。
浴衣を着てきた私には、追いつくのも難しいけど…。

今日は、言わなくちゃ。
高野君に、好きだって言わないと…。

少し猫背で、そのラインがかわいくて。ただ愛おしい。

……けど、どんどん離れて行っちゃう。

「待って…あっ」

石畳に草履が引っ掛かりつんのめる。
何とか転ばなかった代わりに、りんご飴を落としてしまって、足元でひび割れた。

ショック…。

高野君も、私と離れたことに気付いてないみたい。
はぐれた(ことになっている)仲間たちを探しているのかも。

「……私と一緒にいるの、気まずいんだろうな」

ひび割れたりんご飴を拾い上げ、姿を消してしまった高野君の心を案じる。

私なんかと一緒にいたって、楽しくないよね。
全然、しゃべれないんだもん。

割れて、白くひびが入っている飴が悲しい。

今日は、好きって言うつもりだったのに…。
悲しくなってきて、鼻の奥が滲みる。

ゴミ箱探して、もう帰ろう…。

高野君が進んだ方にくるりと背中を向けて、出口につながる道へと歩を進める。
草履の鼻緒も傷んでしまったかもしれない。さっきと履き心地が変わってしまった。

なんだか、泣きたい……。
顔を上げられなくなって、涙がじわりと溢れてきた。


< 2 / 5 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop