独占溺愛~クールな社長に求愛されています~
「はい、すみませんでした」

 詩穂はペコリとお辞儀をした。顔を上げると、目の前の蓮斗は複雑そうな表情をしている。

「あの、なにか?」
「……いや。来週中には完成させられると思う。またなにかいいアイデアがあったら、いつでも提案してくれ」
「はい!」

 詩穂は一礼して、蓮斗のブースを出た。デスクに向かおうとしたとき、西野が彼のブースから顔を覗かせた。

「小牧さん……大丈夫ですか?」

 西野に心配そうに声をかけられ、詩穂は彼の前で足を止めた。

「なにがですか?」
「社長の……大きな声が聞こえましたが」

 詩穂は恥ずかしくなって照れ笑いを浮かべた。

「あらら、聞こえてましたか。叱られちゃいました」
「でも、小牧さんは社長の……なんでしょう?」

 その言葉を聞いて、詩穂はなるほど、と思った。西野は蓮斗が恋人の詩穂に厳しいことを言ったのを心配してくれているのだ。

「今は仕事中ですから。それに、とても的を射た指摘だったのでありがたかったです」

 詩穂がにっこり笑うと、西野は数回瞬きをした。

「小牧さんが……大丈夫なら、いいんです。余計なことを言いました。失礼します」
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