はっぴぃday
彼は一時間程滞在して帰っていく。

目があって言葉を交わすのは、注文時と会計だけ。

でもそれだけで充分だ。

彼は私のお店での癒し。

それ以上もそれ以下も望まない。

ようやく、他人に少しだけ関心と興味を持ち始めることのできた人。

私の中でちょっとだけ特別な人。

長い暗いトンネルから差し込む小さな光り…それが私の中のくろちゃんの存在。

いつかこの暗闇から抜け出す日が来るのだろうか。

「いらっしゃいませ」

今日もお客様にむけるまだぎこちない笑顔。

作り笑いで愛想を振り撒く私を、叔父は時折心配そうに見つめている。

「時が解決してくれるよ」

塞ぎ混む私をこのお店で働くように勧めてくれた叔父。

いつか心からの笑顔を取り戻すことができるんだろうか…。

くろちゃんをチラリと見つめて小さなため息をついた。
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