・MINT

 そんな私の前に、しゃがみ込んだ高木君は上目遣いで私を見上げているから。なんだか子犬みたいに見えてしまう。


「朝から顔色悪いなぁ、とは思ってたんですけど。こんなことなら、今日は俺ひとりで出て来るべきでしたね」


 何時になく心配そうに気にかける高木君は、私の様子が朝からおかしかった事に気付きながら、外回りを止めなかったことを悔やんでいるみたいだ。


 いつの間にか私など必要無い位に、社会人として立派に成長している高木君が頼もしく思える。と同時に、ちょっと寂しく感じてしまうのは。
 私の元から離れ、一人前の社会人として独り立ちする時が近づいた、という証拠でもあるから。


 自覚が無かったわけではない。最近、少し徹夜気味だった。
 というのも、親戚の集まりで「結婚はまだか。しないのか。する気が無いのか。できないのか」等と集中砲火を浴び。

 以来、親戚から情けをかけられ。次から次へと持ち込まれた見合い話を遂行すべく、仕事終わりに相手と会うという、ハードスケジュールが続いていたからだ。

 でも、そんな事情があることなど、到底言えるわけもなく。

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