黒と白の羽

我に従え

狼と睨み合ってどれ位経ったのだろうか・・・否、数秒かもしれない。




狼は今も鈴羅を睨んでいる。



「困ったな・・・」



真っ向から睨んでいる狼を見据えて呟く鈴羅。




―おとなしく喰われるか・・・やられる前にやるか・・・



狼は一歩、近づいてきた。



一歩、二歩、三歩、段々と狼と鈴羅の距離が短くなる。




鈴羅はため息を漏らして大空を見上げた。



「参ったな・・・この世界にも・・・ちゃんと居るよな?
・・・――精霊たち」



狼と距離をとる為に後ろへと跳躍し両手を打ち合わせた。



乾いた柏手の音は風に掻き消される事無く清澄に響き渡る。



合わせた掌を引き離すと、掌の間を蒼い水の線がつないだ。



鈴羅はソレを右手で引き抜くように横薙ぎに振るう。



「【水月―スイゲツ―】召喚!」
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