俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
 
「あ、ありがとうございます!」

こんなわがままをすんなり聞き入れてくれるなんて。感激して思わず身を乗り出すと、周防さんはそれをよけるように後ずさり、ソファから立ち上がった。

あれ? やっぱり怒ってる?と思い顔を上げると、彼は手のひらをこちらに差し向けながら「あー、近寄んな」と背を向けた。

「……怒ってます? ごめんなさい……」

やっぱり申し訳なかったなと肩を落とすけれど、周防さんは「怒ってねえから」とぶっきらぼうな口調で返す。

「でも……あの、さ、最後までは駄目だけど、その……代わりにできることとかあれば何か」

「だーかーら、そういうこと言うなっての!」

そして周防さんはもう一度大きく息を吐くと「頭冷やしてくる」と言ってリビングから出ていってしまった。

ひとり残された私は意味が分からずしばらくソワソワとした気持ちでいたけれど、やがて『頭冷やしてくる』の意味に気がついて顔を真っ赤にした。

(も……申し訳ない……!)

熱くなった顔を両手で覆って、ソファの隅っこで小さくなる。

自分のためにも、色々我慢をしてくれている周防さんのためにも。一刻も早く惚れ薬の効果を解かなくっちゃと改めて決意する、土曜日の夜のことだった。
 
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