俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
 
口を噤んでしまった私を見て、周防さんはニ~っと人の悪い笑みを浮かべた。

「そっかあ、戻んなかったかあ。まあでも俺はいいと思うぞ? この触り心地、最高だしな~」

そう言って周防さんは私のお腹をパジャマ越しにフニフニと撫でる。

私は肩を掴まれていた手を振りほどき全力で逃げると、リビングのドアの陰から「あと三日! あと三日で絶対痩せますから!」と叫んだ。

……そうなのだ。年末の連日の忘年会や飲み会、クリスマスのディナーに加え、鹿児島に里帰りしてご馳走攻めにあった私と周防さんは、ふたり揃って正月太りしてしまったのだ。

自己管理に厳しい周防さんは『仕事始めまでに絶対体重戻す』と宣言し、鹿児島から帰るなりジムとマラソン三昧の冬休みを過ごした。

私も同じ志を持っていたはずなのだけれど……彼ほどストイックな性格ではないことが仇となり、前より柔らかさの増したお腹はもとに戻らなかった。

「私、お正月に帰省すると必ず太るんですよね……。来年は帰るのやめとこうかな」

リビングのソファに戻り自分のお腹を撫でながらブツブツと言えば、スゥエットに着替え隣にやってきた周防さんが、まだ濡れている髪を拭きながら口を開いた。

「俺、初めて鹿児島の雑煮食べたけどすごいよな。でかい海老がドーンと入ってて。あれはお前は太るわ」

そうなのだ。鹿児島のお雑煮にはひと椀ごとに大きな焼き海老が入っているのだ。

海老好きの私はこのお雑煮が大好きで、三が日中食べても飽きないくらいだ。

さらに今年は周防さんが一緒だったので母と祖母が腕を振るいまくり、おせちの他に黒豚のしゃぶしゃぶに鳥刺しに骨付き豚の煮込みに、きびなごにカツオにかんぱちに……とご馳走のオンパレードだった。
 
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