【番外編完結】初恋にピリオドを
そして今に至る。

早く着きすぎて改札付近の柱に寄り掛かって瑠奈が出てくるのを待つ。

家に濃紺のストライプの浴衣があり、なんとか自分の背丈に合わせれた。

母親の実家が呉服屋をしているため、和装に抵抗が全くない龍。

むしろ昔は家に帰れば紬を着て過ごすこともあった。

バスケの練習が忙しくて最近は着てもいないが何着かは今の背丈でも着れるはずだ。

チラリと携帯で事件を確認する。

17:10と表示されていてまだ瑠奈が到着するまで20分はある。

だがこんな時しか龍は瑠奈を待つと言うことがない。

普段からバスケが終わるのを瑠奈が待っているのだ。

待つって退屈だな……そう思いだした頃

「おにーいさんっ!1人ぃ~?」

「お兄さんめっちゃイケメンだね!ねーねーうちらとお祭り回ろうよぉ~」

矢鱈と語尾を伸ばし、媚を売って近付いてくる大学生風の女が2人。

自分達がイケてるとでも思っているのだろうか。

下着かと思うような露出の高い服を着て、何とも言えない臭いの香水をこれでもかと振りかけて、派手なメイクをして、自分達の低能さをアピールするような喋り方……

唯一良いところを挙げるとしたら華奢な体つきだろうか?

無視を決め込み、瑠奈が到着するのを待とうと決めた龍だった。

だが、獲物を捕らえようと目の前の女豹2人組は龍が喋らなくても聞いてもない自己アピールをしだした。

(ウゼェ………)

人当たりがよく、いつもニコニコしている龍だが初デートを前にこんな風に瑠奈待ちの邪魔をされては怒りも募るはずだ。
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