【番外編完結】初恋にピリオドを
思えばその日は朝からツイテいなかった。

いつもなら目覚ましが鳴る前に起きるのに爆睡して目覚ましを寝ぼけて止めてしまい寝坊したこと。

慌てて起きたら酷い寝癖がついてて、それが中々直らなかったこと。

朝食も食べる暇もなく家を出て、駅までダッシュすればヒールが折れて転んでしまってお目当ての電車に乗れなかった。

始めから言い出したらキリがないほどその後も本当にツイテいなくて最低最悪の日だった。

そして疲れ果てた状態で家に帰れば、どこか怒っている表情の兄がスポーツ紙とエアメールを渡してきた。

「彩月くん、どーしたの?」

兄の彩月(サツキ)は普段から無口であまり感情を表に出さないのに今日はとても怒っている。

街を歩いているとイケメン!とキャーキャー言われているのだがいかんせん兄は黙りすぎるのだ。

肝心なことを口にしないのでよく彼女にも振られている。

そのせいか面倒臭くなったのか定かではないが、最近では彼女を作らなくなった。

「あいつ、婚約したぞ」

そう言って私の手にスポーツ紙とエアメールを乗せるとそのまま二階に上がって行った。

兄の言っている意味が分からず、スポーツ紙を広げてみた。

ーーバスケ界の星 如月 龍 婚約!!ーー

何のことだかさっぱり分からず、文字は読めたが内容までは付いてこなかった。

如月龍(キサラギリュウ)とは兄の親友で大学在籍中にプロバスケット選手になり、今ではNBAで活躍している。

そして……………………私の想い人だ。
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