すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
その着信から間を置かずに何度もかかってくる電話、そして入る録音。

ーー新しい服、可愛かったね。でも、僕ならフリルがついた、もっと可愛い服を選ぶかな。
ーー僕なら、君とのデートは動物園がいいな。今度一緒に行かない?
ーー昨日は風呂場で驚かせたかな?写真が上手く撮れてなかったから、次はしっかり撮りたいな。
ーー僕の天使に会いたくなってきた……。
ーーねえ……会いに行っていいよね?

いつの間にか手から離していたスマホから距離を取り、呆然として震えながら着信が入る度にビクッと反応していたら、最後の言葉に息を詰まらせた。

咄嗟にスマホに飛びつき電源を落とすと、激しい運動もしていないのに肩で大きく息をしていた。
少し落ち着こうと深く息を吐いた次の瞬間、インターホンの音が聞こえて肩を跳ねさせた。

恐る恐るインターホンのモニターを見ると、そこには警察の格好をした人が立っていた。
背格好からして吉嶺や松浦では無さそうだと思い、出るか出ないかを迷っていると、ガチャガチャッと鍵のかかっている玄関のドアを無理に開けようとする音が聞こえた。

「っ……!?」

モニターでは警察の格好をした人が動く度にドアを開けようとする音が響く。

ーー違う……警察じゃない……!

青褪め、震え上がる体に鞭打って、藍里は駆け出した。
寝室に入りドアを閉めても、何度もインターホンが鳴る音とドアを開けようとする音が聞こえてくる。

足が縺れそうになりながら藍里はベッドまで駆け寄り、やがて力尽きるようにその場に崩れ落ちた。
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