すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
全ての事の始まりは両親の離婚で引っ越した先で通うことになった幼稚園での初日の出来事だった。
中途半端な時期での転園だったのもあり、同じ組になった子達は興味津々な顔でこちらを見ていたように記憶している。

先生に、お名前言えるかな?と聞かれて元気に自己紹介すると、上手に言えました!みんな拍手ー!と先生が拍手しながら言って、周りの子供達も笑顔で拍手をしてくれた。

それがとても嬉しくて、指定された席に座ってもにこにこしていたら隣に座っていた男の子が小さな声で言った。

『なにニヤニヤわらってんだよ、チビ』

聞き間違えかと声のした方を見ると、その男の子はチラッとこっちを見たかと思ったらすぐに視線を外してからまた一言、こっちみるな。と冷たく言い放った。

嬉しい気持ちというのはこうも一瞬で消え去ってしまうものなのかと、幼いながらも身に染みた瞬間だった。

確かに自分は他の子と比べてもかなり小さく、それは大人となった今でも変わらない。
けれど、子供心に初対面の男の子に言われたその言葉はあまりにも強烈で、大人となった今でも鮮明に思い出されて気落ちしてしまうほどだった。

それが幼少期の智大との初めての出会いだったのだけれど、これが藍里の性格と人生に大きな影響を与える切っ掛けとなったことは、この時にはまだ誰も知る由もなかった。
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