生簀の恋は青い空を知っているか。

それは確かにそう。同意しながら自分のカルーアミルクを混ぜる。
あの頃のわたしは自分が飲酒をしている想像すらできなかった。

「映画同好会ってだけでね」
「しかも私たち以外殆ど幽霊部員だったじゃない」
「今思えばお嬢学校だったから許された娯楽だよ」

理美はすぐに一杯目を空にして、通りかかった店員さんに二杯目を頼んだ。相変わらずピッチが速い。

チーズ揚げをひとつ摘まんで、中学の頃を思い出す。

「たまに松葉が持ってきた映画を見てたのよね。恋愛映画が特に面白かった」
「鼎は女性側に立って大抵男が悪いって怒ってた」

わたしの意見に理美が「そうそう」と笑った。

< 12 / 331 >

この作品をシェア

pagetop