生簀の恋は青い空を知っているか。
前の道路に車が通る。ヘッドライトがわたしと浅黄さんと順に照らして去っていく。
「選択は自由の上に成り立つ」
「はい」
「選択には大体理由が伴う」
「はい」
「俺が君を選んだ理由には愛情が伴ってても可笑しくはないだろ」
はい、と返事をしそうになった。
「君が好きだ」
何かの歌のタイトルみたいに、そのジャケットみたいに、浅黄さんは言った。
「ずるい」
わたしの返答に目を丸くする。何が、と浅黄さんは言いながら車のキーをポケットから出した。
「先に言うのはずるいです。後から言う方は、『自分も』って答えるしかないじゃないですか」