生簀の恋は青い空を知っているか。

「この前の採用の人の話、もう少し早く持ってきてもらいたかったんだけど」
「それは、すみません。遅くなってしまって」
「今度からは早めにね」

そう言って、彼女は総務課から出ていく。その背中を視線だけで見送り、姿が見えなくなってから息を吐いた。止めていたわけでもないのに。

「この前っていつの話ですか?」
「……三月かな」
「うわ、それは言いがかりですね」

五色くんが半笑いで机に向かった。

「突っかかれるようなことを何かしたかね、わたしは」
「凡そ結婚が羨ましいんじゃないですか?」
「その話、皆知ってるの?」

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