Hate or Love?愛と嘘とにまみれた世界の片隅で
「どうぞ」


運転手はニコリともせず後部座席のドアを開け、すぐに運転席に戻る。


車内はあたしと運転手しかおらず、静まり返っていた。


ただエンジン音だけが空気を震わす。


「今日は宮瀬、居ないんだ」


あまりに気まずくて居心地が悪いので試しに話題を振ってみる。


すると運転手はバックミラー越しにあたしと視線を合わせ、短く答えた。


「聖様は忙しいので」


「…そう」


あの男はどういう仕事をしてるんだろう。


ナオのように傘下を取り仕切ってるのか、それとも幹部に近い位置にいるのか。


「汐美様もこれから仕事が増えることになるでしょう。何かあれば何でもおっしゃってください」
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