クールな専務は凄腕パティシエールを陥落する
「か、和生殿。どこに向かって・・・」

愛菓の質問にも答えず、

タクシーの中での和生はブリザード注意報が出ているかのように無言で静かだった。

諦めた愛菓は目を閉じ、右側の窓に寄りかかってため息をひとつ溢した。

すると、正面を向いたまま、和生が愛菓の頭をグイッと自分の肩にもたれかけさせた。

和生の不器用な優しさに、愛菓はクスリと笑って再び目を閉じる。

その後、

次に愛菓が目を開けたのは、見慣れぬ天井と広いベッドの上だった...。

和生の姿はない。

一瞬、自分がどこにいるのかわからずに寝ぼけていたが、そういえば、和生とお酒を飲んだ後に、タクシーに乗り込んで目を閉じたことを思い出した。

「和生殿が運んでくれたのかな?重かったに違いないのに・・・」

愛菓は男の家に連れ込まれたことに危機感を持っていないし、その事に疑問すら抱かない、超絶マイペースだった。
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