クールな専務は凄腕パティシエールを陥落する
「素敵な方ですよね。優吾さんは」

抑揚のない和生の声が、愛菓にはやきもちを妬いているように聞こえ、愛菓は可笑しくてクスリと笑った。

「和生殿には叶いませんよ」

意外な切り返しに、和生も少し驚いて、愛菓を見つめる。

「昔、お付き合いされていたんでしょう?」

「さすが、敏腕専務のMr coolとうたわれるだけある。全てお見通しですね」

愛菓はスクッと上半身だけ起き上がると、胸にシーツを巻き付けて、長い前髪を掻き上げた。

白い肌と茶色がかった綺麗な髪の色が合わさって絶妙に美しい。

「同じ職業だと、選択肢は協力関係かライバル関係に分かれてしまいます。私達は、お互いに高め合うことはできても、どちらかがどちらかに歩み寄るとか妥協するとか、そういった関係にはなれなかった」

苦笑する愛菓だが、その表情に、寂しさとか、悔しさや後悔は見受けられなくて内心ホッとする。

「何よりも、私は優吾さんと同じくらいみんなを幸せにするショコラも作りたい。゛住み分け゛とか゛遠慮゛とか、もう関係なくスイーツに邁進します」

優吾と愛菓は言わば師弟関係で、今はライバル的な存在だと、愛菓は言った。

白人とは、同じ師弟関係だが、白人の愛菓に抱く感情は、尊敬の念と盲目的な信頼。

だから、恋愛関係にはなり得ないのだと、愛菓は笑っていた。

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