クールな専務は凄腕パティシエールを陥落する
「そして、第一位」

観客も審査員も一斉に正孝を見る。

勝っても負けても、愛菓の目の前の現実は変わらない。

観客席の感じる和生とアリスの視線。

二人の幸せを祈ることだけが、愛菓にできるたったひとつのこと。

アリスを美佳の二の舞にはできない。

愛菓はギュッとコックタイを握りしめると、真っ直ぐに和生を見つめた。

「一位は・・・日本代表・氷山愛菓さん!メディア投票得点40点、特別審査員投票得点40点、一般審査員得点40点、合計120点の圧勝です!」

愛菓は表情も変えずに、ゆっくりとお辞儀をした。

そして、和生とアリスを交互に見て、ゆっくりと微笑み、胸元に右手を置いて親愛の挨拶をすると、ステージに上がって行った。
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