同じ人を好きになるなんて
私はスマートフォンをテーブルに置くと2階へと上がった。

自分の部屋に入るとスーツケースに自分のものを詰め込んだ。

だけど途中でピタリと作業する手が止まる。

その代わりに大粒の涙がとめどもなく溢れ出した。

もう一度やり直せると思ったのに再開までの5年はあまりにも遅すぎたと……。

同じ人を好きになってまた同じように別れを選ぶなんて。

だけど好きになったことは後悔してない。

陸斗が私に対して一時の気の迷いだったとしても私は前のよう自分に嘘はつきたくなかった。

だから陸斗に対して憎む気持ちはない。

それよりも短い間だったけど私を愛してくれたこと。

それだけでもう十分。

それに陸斗からは貰いすぎるほどのお給料をいただいた。

これを引越し資金にしてあとは図々しいかもしれないけど岡上社長に甘えてまだ可能であれば秘書の仕事をしよう。

全部の荷物をスーツケースに詰め終え時計を見る。

りっくんたちが帰ってくるまでまだ十分すぎるほど時間があった。

だから私は玄関にスーツケースを置くとキッチンに戻った。
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