同じ人を好きになるなんて
「まゆりがいてくれるから心置きなく仕事ができたよ」

満足そうに上着を脱ぐ陸斗。

「お風呂入れるけど……」

「じゃあ、先に入る。でもその前に理人の様子見てくるよ」

「うん。でも寝たばかりだから静かにね」

「わかってる」

その間にご飯の準備に取り掛かろうとした。すると陸斗が階段の途中で足を止めた。

「なあ」

「何?」

陸斗は私の目をじっと見つめるとニコッと笑った。

「本当の家族みたいだなって思って」

何を言うかと思えば

「な訳ないでしょ?」

私は冷たくあしらった。すると陸斗は大きかため息を吐き「つまんね〜な〜」と言いながら階段を上がっていった。

だが私は心中穏やかではなかった。

何が本当の家族みたいなのよ。

私たちは五年前に別れて、その後自分だけ先に結婚しちゃったんでしょ?

そんな人がよくもぬけぬけとこんなことを言えたもんだ。

いやいや、こんなことで目くじら立てるのもおかしい。

私は彼に雇われた家政婦なのだから。
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