君がキライなそのワケは
恋の始まり
今朝のことだった。
いつものように満員電車での通学。

ただでさえ憂鬱な朝。この混雑はさらに気持ちを暗くさせる。
いつものようにホームから人でいっぱいの車両に乗り込む。

私はなるべくドア側に立つようにしている。
車窓から見える景色を見れば、この憂鬱な通学時間も少しはマシなものになるから。

「ふぅ」

私服で通える高校を選んだのは自分だけど、その代わり毎朝これ……。
ため息のひとつも出る。

と、その時だった。

(ん?)

最初はほんの小さな違和感だった。
腰の部分に軽く手を添えられた、そんな感じ。

(まぁ満員電車だしな)

自意識過剰になってるのかも、と思い直してすぐに意識を窓の外に飛ばす。

(今日もあまり天気は良くなさそうだ。
折り畳み傘、持って来たっけなァ)

そうこうしているうちに一つ目の駅に止まり、さらに車内は人が増えてぎゅうぎゅう詰め。
短く息を吐いて窓際を死守したことに安堵する。

「!」

まただ。腰にピタリと当てられた手がゆっくりと上下するのがわかった。

(まさか)

この格好しているし入学してから触られた事なかったのに。

そうこうするうちに無抵抗だと判断したのか、その手はスルスルと腰から尻のラインを擦り始めた。

(こ、このっ……!)

全身の血が沸騰するような気がした。
怒りと羞恥。あと蘇ってくる恐怖と絶望感のトラウマ。

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