俺の、となりにいろ。
 備品室へ戻ってから、私は上司である城ノ内主任が置いていったであろう、各部署の備品依頼書を手にする。
 開け放った窓から見える、今日も遠くまで晴れ渡った澄んだ青い空を眺めた。

 いや、眺めていたわけではない。

 心はどっぷりと思い出に浸っていた。


 今思えば、人生で一番の屈辱を味わい、これ以上落ちることのない闇の中へ叩き落とされた日。

 夜遅い雨の中、ずぶ濡れで子犬のように丸くなって座っていた男性と出会った。
 生きる気力も失い、もうどうなってもいいやと自暴自棄になっていた私は、何も言わずに彼の腕を引き上げて家に連れて帰ったのだ。
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