クールな騎士団長はママと赤ちゃんを一途に溺愛する
初めてリアナと会ったのはヴァレーゼ王国騎士団の副団長に就任した頃のことだった。

ユベル・トレド騎士団長の屋敷を訪ねたときに、ひとり娘だと紹介された。

今年十七歳になるとのことだったが社交界デビューを果たしていないせいもあり、彼女の存在はあまり世間に知られていなかった。

社交界で話題になったこともない影の薄い令嬢。その為ごく平凡な女性かと思っていたが、実際の彼女はリカルドの心の琴線に触れた。

波打つ美しい髪は珍しいストロベリーブロンド。大きな空色の瞳は愛らしく、屈託なく微笑む姿は清らかでまるで聖女のようだと思った。

聞き心地の良い涼やかな声。使用人達に向ける眼差しも穏やかで優しい。

美しい女性など散々見て来たはずのリカルドが、ろくに言葉を出せない程心を奪われた。

彼女は挨拶を終えると早々に屋敷の奥に引っ込んでしまったが、その姿はいつまでもリカルドの脳裏から消えなかった。

それが一目惚れで、自分は恋に落ちたのだと自覚すると、リカルドは直ぐに行動に出た。

両親にトレド騎士団長令嬢に求婚をすると宣言した。初めは身分が違い過ぎると難色を示されたが、自分は次男なのだし、結婚相手の出自を重視しなくてよいはずだ。

あらゆる手を使い反対を封じこめ、両親の了承を得ると、ユベルに正式に結婚の申し込みをした。

リカルドは王家と縁戚でもある名門公爵家の出身で、騎士としても数々の成果を上げている。

騎士として規律を守り、ストイックな生活をしていた為、悪い噂もない。

何よりユベルとの仲は良好だったので、断られる心配などしていなかった。

しかし、返事は予想外のものだった

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