Match maker
「実雅さんは、素敵な人だって私は思ってます。それは職場が一緒だから、働き方だとか、色々見て、ちゃんとあなたの事を知った上で素敵だなって思ってます。だけど…彼女は実雅さんの顔だけだと思う。結婚出来たら誰でもいいんじゃないの。きっと、実雅さんとマッチングしても検索は続けてるんじゃないかなって…」

雅実が、俺の顔だけが好きな事は知ってる。

顔が好きなら、そこをふんだんに使おうと思っている。

それで良かった。むしろ、雅実が好きだと思う顔で産まれてきた事に感謝するほどだった。

だけど、人から言われると、こんなに打撃を受けるものか。

「0を通して会った人に、“好き”って言われても、ちょっと怖いしなぁ。マッチング、始めたばかりでしょ?」

「ええ、確かに。」

時期尚早だったと?

「ステップがね必要ですよね。駆け引きも。」

…駆け引き?

何だ、それは。

「試しに、暫く、実雅さんから彼女に連絡取らないで下さい。きっと、彼女の方から連絡が来ますよ。」

そう言って笑うと

「さ、今日はこれくらいにして、また今度お話しましょう!」

パンッと手を叩いて彼女は立ち上がった。

「恋愛って、自分の気持ちを押し付けるだけじゃ、ダメなんですよ。」

品川さんは、最後にそう言った。

押し付ける。

それは、俺がしてきたことがただ一方的だったと言うことだろうか。

雅実にとって“怖い”事だったのだろうか。
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