陽華の吸血鬼➁【一人称修正ver.】【完】
ゆらりとした動作で私に笑みを向けてくる澪さん。
「真紅お嬢さん?」
………こわい。
澪さんの背後に黒い影が見えるのは、見鬼でなくても同じはずだ。
澪さんは黎が影小路家の人間と恋仲だということに文句があるのではなく、私そのものを毛嫌いしているようだ。
影小路真紅として逢ったときは、父である嗣さんが必死に止めないとその辺の花瓶でも投げて来そうな勢いだった。
……まあ、わからないでもないからなー。
小路十二家と呼ばれる、本家に次ぐ格の家の直系ながら、能力に恵まれなかった澪さん。
私は影小路の家のことすら知らず十六年生きて来たけど、取り戻したのは自分でもコントロールに必死になる力だ。
ただの人間と術師という、決定的な差。しかも私はにわかもの。