陽華の吸血鬼➁【一人称修正ver.】【完】
「……俺に?」
黒ちゃんは胡乱(うろん)に眉を寄せる。
私は決然とした言葉を放った。
「海雨の祓魔(ふつま)を、今、一気に行う。私が少しずつやっていたけど、遺された残滓が大きすぎる。私の力だけでは、あとどのくらいかかるかわからない。それまで海雨の体力が持つかも……。
今の海雨の状況は、私の把握不足でもある。私の祓いより残滓の浸食の速度が速くて、海雨の状態を危なくしたんだと思う。だから、お願い黒ちゃん。最悪を起こさないために、今の海雨を助けたい」
影小路にとっての最悪、とは、死者が出て泰山府君祭が行われることだ。
その予防線を張ることは、禁忌ではない。
黒ちゃんは大きくため息をついた。
「俺は小手先の仕事は苦手だ。荒っぽいぞ?」
「細かいところは私が請け負う。私が海雨の内部へ這入りこんで海雨から残滓を引き離す。外に出た残滓を片付けてもらえたら、それ以上のやり方はないと思う」