雨宮社長の専属秘書は気苦労が絶えません

榊「だ、大丈夫ですか? お怪我は!?」
陽和「大丈夫です、転んだだけです。すみません、私が前をよく見てなかったので」
居合わせた男性「君、膝から血が出てるじゃないか!」

周りの人がざわめき始める。
榊が青ざめた顔で、

榊「きゅ、救急車を」
陽和「そんな、平気です」

立ち上がりながら時計を見る陽和。
(やばい、遅刻する!)

榊「とりあえず警察に連絡します」
陽和「いえ、本当に大丈夫なので。車に当たったわけじゃないですし」
榊「そういうわけにはいきません」
陽和「でも、時間がなくて。急いでるんです」
榊「では、名刺を渡しますので後でお詫びを……」

榊が名刺を取り出そうとしていると、停まっていた車の後部座席のドアがゆっくり開きスーツ姿の男性(以下・雨宮)が出てくる。

雨宮「何をしているんだ?」
榊「今、このお嬢さんに名刺を」

陽和を一瞥する雨宮。
面倒くさそうに首を振って、

雨宮「いくらいる?」
陽和「え、いくらって……」
雨宮「好きな金額を言えばいい。警察を呼ぶ気がないと言うのなら、当たり屋だろう」
陽和「……」
雨宮「早く言いなさい、いくらだ?」

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