雨宮社長の専属秘書は気苦労が絶えません
陽和「秘書の花里と申します」
アンジュ「下の名前は、なぁに?」
陽和「陽和です」
アンジュ「じゃぁ、ひーちゃんね。私は長岡 杏樹」
陽和「モデルのアンジュさんですよね、存じております」
アンジュ「わぁー嬉しい」

にこやかに両手を広げ、陽和にハグを求めるアンジュ。
その後ろで雨宮は面白くなさそうな顔をして、腕組をしている。
陽和にハグをしたアンジュは、陽和にだけ聞こえるような声で、

アンジュ「瑛士にちょっかい出さないでね、秘書さん」

と呟いた。


〇某カフェレストラン(昼)

AMAMIYAFOODSがプロデュースカフェレストランにて。
陽和と立花、愛花が打ち合わせを兼ねたランチを取っている。
ちなみに、雨宮は別件の仕事があり同行するつもりが、直前でキャンセル。
そのため、愛花の機嫌がすこぶる悪い。

陽和「――ですので、こちらのようなヘルシーかつ華やかなメニューを提供しようと考えています」
愛花「ヘルシーかつ華やかね、いいんじゃない」
陽和「それと、これは提案なのですが、メディアで活躍している料理研究家をダイエット食の監修に起用してはいかがですか?」
愛花「いいんじゃない」
陽和「あと、運動後に提供するドリンクですが……」
愛花「いいんじゃない」
陽和「まだ何も言ってないですよ」

実は、愛花同様に陽和の機嫌も悪かった。
雨宮が不在と分かった途端、打ち合わせの内容を聞き流す愛花に、陽和がついにキレる。

陽和「打ち合わせをする気が無いのなら、今日はもうやめましょう」
愛花「ちょっと、何よその態度。私はクライアントよ」
陽和「打ち合わせが終わったので、今日ももうクライアントではないです」
愛花「はぁ? 何その理屈~。むかつく」
陽和「ムカついているのは、こちらも同じです」

目の前にあったお肉をフォークで、グサリと突きさす陽和。
その殺気だった雰囲気に、愛花と立花が思わず目を合わせる。

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