仁瀬くんは壊れてる
 玲二くんは、告白を全部断っているらしい。

「もう。沙羅っ……!」
「ぜったい花のことまだ好きなんだよ、アレ」
「……っ」
「でも。それでいいと思うな、うちは」
 ……え?
「それがレイジの良さでもあるよね。気を紛らわすために他の子と付き合ってみたり、とりあえず可愛いからオッケーしてみたり、そういうことしないじゃん。ヤりたい盛りの男子高校生なのに」
「……ヤりたい盛りって」
「真っ直ぐだよね。未練上等。悩めよレイジ」

 悩むの?

「心配しなくてもレイジは。幸せを掴む男だ」
「……沙羅って。本当に玲二くんのことよくわかってるよね」
「腐れ縁だから」

 前もそんなこと聞いたような。

「素敵なところ、たくさん見つけて。惚れちゃったりしないの?」
「は? 誰に」
「玲二くんに」
「あはは。ないない」
「そっか」
「……というか。今更そんな関係には。ならないっしょ」

 ――今更?

「腐れ縁って。中学の同級生ってだけで腐れ縁?」
「もっと長いかな」
「もっとって?」
「幼稚園から同じ」

 二人は、幼なじみなんだ……!?

 そうか。だから家に遊びに行ったことあったりしたんだね。

「そんなことより。仁瀬くんと連絡とってるー?」
 …………!
「文通、してる」
「この時代に!?」
「……いけない?」
「や、すごい。素敵だと思う。手書き?」
「そうだよ」
「エアメールか」

 巧くんの病気のこと、隠してるのは申し訳なく思うけど。
 こればかりは巧くんの頼みなので嘘をつき続けるしかない。

 初めて書いた手紙の返事が届いたのは、わたしの誕生日だった。

 玲二くんの家で開いてくれた誕生日会から帰ったら、ポストに封筒が入っていて。
 差出人の名前に、見覚えのある綺麗な字で“仁瀬巧”って書いてあったんだ。
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