仁瀬くんは壊れてる
「花さ〜」
「ん?」
「綺麗になったよね」

 沙羅が、顔を覗き込んでくる。

「わかる!」
「なんでなんでー?」

 果歩と理沙が、乗っかってくる。

「同感」

 玲二くんまで!?

「……沙羅。あのね」
「なんでも聞くよ」

 沙羅が、囁いた。

「どんなこと聞いても。友達だから」

 ひょっとすると、沙羅は――
「右に同じ」
「玲二くん……」

 二人は、全部気づいてるんじゃないかと思えてきて。
 それでも仲良くしてくれているのかなって。
 涙腺が、ゆるんだとき。

「ちょっとー。お菓子と飲み物が、ない!」
「ああーっ」
「あたしたち買い出し行ってくる」

 果歩と理沙が、スーパーへ向かった。

「あいつら。空気読めたんだな」
 と、玲二くん。

「さーて。話してもらおうか」
 と、沙羅。

「……うん」


 それから、ありのままの事実と想いを沙羅と玲二くんに伝えた。

 仁瀬くんが、苦手だったこと。
 付き合ってもないのにキスされたこと。

 泣かされて。喜ばれたこと。

 学園祭の邪魔をされそうになったこと。

 だけど。

「大切な存在に。なった」

 愛してしまったこと。

 ひとつだけ。
 病気のことだけは、言えなかった。

「花」
「……はい」
「今。幸せ?」
「うん」
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