偽婚
恋愛禁止なんて、どこぞのアイドルみたいだ。

と、思ったけれど、私のデート現場を誰かに見られても困るだろうし、何より元カレから受けた心の傷はしばらく治りそうもないので、それでもいいかなと思い直した。


こうなったらとことん、お金のためにやってやろうじゃないかという感じ。



「どうだ? 本気で俺の提案に乗るか?」


たかが1年の我慢じゃないか。

別に牢獄で過ごすわけじゃないし。



「いいよ。全部、神藤さんの言う通りにする」


強くうなづく私に、神藤さんはふっと笑みをこぼして見せた。



「じゃあ、改めて、これからよろしくな、杏奈」


硬い握手。

これで私たちの、契約成立だ。

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