一人っ子なのに末っ子になりました

ハァ、ハァ
なんだ?この家は

学校の運動場並みの距離を必死で走って

たどり着いた塀は


「絶対無理だ」


恐ろしく高い

それに足場もない

塀沿いに歩いてみるものの

視線の先に終わりが見えない


「疲れた」


近くに鎮座する大きな庭石に
とりあえず座ってみる


「最悪」


ポツリと零した声は
シンとした夜の庭に吸い込まれ

靴下の足から寒さが襲ってくる

・・・凍死?

雪も降ってないのに
既に悲劇のヒロイン風

少し休んでまた塀からの脱出を試みようと思った私の耳に


ガルルルル

ヴゥゥゥゥ


動物園の猛獣の唸り声が聞こえた


「・・・っっ?」


目を凝らし辺りを見回してみるけれど
声の主の姿が見えて来ない

でも・・・微かに
カサ・・・カサ

近づく気配に身体が固まった


本日二回目の


・・・万事休す


ハァとため息を吐き出した
目の前に


「ヒッッ」


真っ黒の獣3匹が姿を現した


鼻の上にシワを寄せながら
低く唸り続ける

・・・ドーベルマン?

不審者→噛まれる

なんて危機的状態なのに

庭の照明に照らされた3匹は
とっても可愛く見えて

バカな私は

「おいで」

3匹の前に両手を差し出した



「「「ヴァンッ」」」


「キャーーーーー」









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