一人っ子なのに末っ子になりました


・・・危なかったぁ


マンション前がバス停じゃなければ
間違いなく乗り遅れていたはず

何処の誰だか存じませんが
ノロマ、いや・・・
お上品なおばあちゃんありがとう

ノンステップバスのはずなのに
なかなか乗れないおばあちゃんが居てくれたお陰で
バスの運転手さんが降りて介助する奇跡が生じて

私の乗り遅れが免れたのだった


・・・ハァ


流れる景色を眺めながら
落とした視線に入る自分の格好に溜息をついた


結局・・・
制服のまま出てきてしまった


言い訳は沢山あるけれど

私は中学生だから
“らしく”することにした


って言えば
聞こえは良いけど

完全なる放棄

お母さんに叱られるかな?とか
いや・・・叱られたことあったっけ?とか

なんならこの恐怖の日に
人生初の“母に叱られ記念日”にしようか?とか


結局・・・
あれ程“禁止”と念を押されたはずの脳内お喋りが続き

バスの移動中
セーラー服を思い出すことはなかった


バスの乗客の殆どが降りた駅前は
夕方のラッシュで混み合っていた

石の彫刻作家が手掛けたと有名な
冷たいベンチに腰掛ける

スマホのメッセージアプリを開くと
母に(着いた)と短く送った









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