暴走族の総長様は、私を溺愛してるらしい。
「……」

長い沈黙の末、出た答えは。

「…いいだろう。だが、条件をつけたい」
「条件によってはのみます」
「条件は、1つだけ」

「絶対に菜乃を泣かせるな」

「……はい。絶対に泣かせません」
「泣かせたら、即刻帰宅。いいな」
「はい」
「…菜乃」
「……」
「いつでも帰ってきてくれ。待っている」
「帰るつもりはありません」
「帰ろうよ…」
「帰りません」

今にも、泣きすがってきそうな父さんをあしらって、踵を返す。

でも、最後に。

「ありがとう、お父様…」

もう、昔ばっか気にしてなんていられない。

私は、前を向いて生きたい。
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